Fiat Lux

Fiat Luxとは「光が生まれますように」「光あれ」という意味のラテン語から来ています。旧約聖書の創世記1:3に「神は『光あれ』と言われた。すると光があった。」という一節がありますが、直接の関連はありません。しかし、昨年この場で演奏されたDa Pacem Domine「主よ、平和を与えたまえ」という曲とはやはり関連があるように思われます。

そもそもDa Pacem Domineという曲はその頭文字であり、また神を表すD音(レの音)から始まらなければなりませんでしたが、それは叶いませんでした。その反動として今回はD音から始まり、またそれが中心音となる必要がありました。冒頭の音から音楽が拡がっていく様子は神が世界を創る風景と重ねることができるかもしれません。

でも先にも申し上げた通り、この音楽はそんな決然としたものではありません。音はゆっくりと拡がり、空気を満たし、光を生み出していくようです。まばゆい光を感じる箇所もあるかもしれませんが、同時に深い闇を内包しており、明確な風景や結論や感情は用意されておりません。光さえも白く明るく感じるか黒く暗く感じるかは、触れた人の心次第かもしれません。曲の終わりには鐘の音も聞こえ、低弦が深い闇を奏でる中で高音が奏でるものは皆さんをどこへ連れていくのか、私も初演を楽しみにしております。

作曲/杉山浩一